老舗「銀座千疋屋」、若年層にリーチ 一般の投稿写真で共感得る

インスタグラムの活用方法


【日経新聞掲載】2020年9月16日


企業がSNSを通じて、自社の商品やサービスを発信するのが当たり前の時代となった。それだけに、ただ漫然と発信しているだけでは、多くのPR情報に埋没してしまう。そんな課題に突き当たったのが老舗の高級果物専門店、銀座千疋屋(東京・中央)だ。打開策は、若い一般顧客が何気なくSNSに投稿した写真にあった。


創業1894年の銀座千疋屋は、メロンやブドウなど1つ数万~数十万円するような高級果物をそろえている。贈答用として人気を博してきたが、顧客の多くは60代以上の常連客だ。「次世代を呼び込まなければ」(銀座千疋屋)という危機感が募っていた。


20~30代を取り込むため、フェイスブックの発信を始めたのが4年前のこと。当初はノウハウがなく、若者が注目するような情報の伝え方がわからなかった。各店の更新頻度もばらつきがあり「全く成果を上げられなかった」と担当者は振り返る。


若年層への発信で他社に後れを取るなか、IT(情報技術)ベンチャーのギャプライズ(東京・新宿)に支援を求めた。同社と進めたのが、一般顧客が撮影した贈答品やスイーツなどの自社商品写真を、電子商取引(EC)サイトを兼ねたホームページ上で紹介する取り組みだ。


銀座千疋屋の担当者はインスタグラムなどの投稿サイトからそうした写真を集め、投稿者に許可を得て掲載する。閲覧者はおいしそうと感じた写真を思わずクリック。するとギャプライズが提供しているシステムを通じて商品購入のページに飛ぶ仕組みだ。発信力を高めるには影響力のあるインフルエンサーを活用する方法も多いが「作り込まれた写真よりも、一般顧客が撮影した写真の方が共感を得やすい」とギャプライズの鈴木隆司執行役員は指摘する。


投稿者に許可を得て掲載する作業はかなり手間がかかりそうだが、実はここも重要。投稿者が公式サイトでの掲載を喜び、自身のSNSで再度そのことを投稿するケースが多いからだ。公式サイトは自然と拡散していく。こうしたやり取りを通じて、SNSを日常的に利用する若い顧客をECに誘導していった。


EC側では若い顧客でも手の届く数千円台のゼリーや菓子などの商品を拡充した。19年、SNSを通じたECサイトへのアクセス数は17年比で実に18倍に増えた。ECの客単価は毎年200円ずつ下がっている。これはむしろ「若年層への認知度が高まっている」(銀座千疋屋)ためで、一定の手応えを感じているという。


顧客にとってECの商品レビューを投稿する作業は面倒だが、こちらも改善した。購入者は購入した際に登録したメールアドレスで銀座千疋屋からメールを受け取る。このメールに返信するだけで、ギャプライズのシステムを通じてレビューがECサイトに自動的に書き込まれる。購入者の多くはレビューを参照しているため、レビューの数をそろえるのも大事だ。


SNSを通じた商品PRは低コストで簡便だが、埋もれてしまっては意味がない。若い顧客をSNSで巻き込みながらECに誘導する老舗の取り組みは、顧客の高齢化に悩む企業にとってヒントになりそうだ。


(井上航介)


[日経MJ2020年9月16日付]

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