今年はオンライン文化祭

インスタグラムの活用方法


【日経新聞掲載】2020年9月8日


新型コロナウイルスの影響で学校行事の中止が相次ぐなか、オンライン上で文化祭を開く学校が目立ち始めた。インターネット上に仮想の展示空間を作って作品展を開いたり、動画投稿サイトで動画を公開したりと演出にも知恵を絞る。専門家は「ネットを通じたメッセージの伝え方を考える貴重な機会になる」と期待している。


「コロナだから中止?そんなのはもう時代遅れだ」。筑波大付属高校(東京・文京)の文化祭「桐陰祭」のポスターには強い決意がにじむ。同校は毎年9月に文化祭をしていたが感染拡大防止のため通常開催を断念。生徒と教員の話し合いの結果、10月18日にオンライン上で開催することを決めた。


文化祭の実行委員長で高校3年の岩田楽さん(18)は「部活の試合や学校行事がなくなり、もどかしさを感じていた。文化祭は何としてもやりたかった」。3学年約50人で構成する実行委はコロナ禍の休校中もビデオ会議システム「Zoom」などで議論を重ね、組織体制や運営マニュアルもゼロから見直した。


文化祭では仮想現実(VR)空間でイベントが開けるバーチャルSNS(交流サイト)「cluster(クラスター)」を活用。自身の分身となる「アバター」が、VR空間に再現された校舎やライブ会場を巡り、生徒のバンド演奏やお化け屋敷などの録画映像や生配信を楽しめるという。VRゴーグルがなくてもパソコンなどで視聴でき、保護者らも見ることができる。実行委はユーチューブなどでの動画配信も計画中だ。


7月にはプレイベントとして、VR空間上で謎解き迷路大会を開いた。副委員長の後藤光正さん(17)は「オンラインなら学校の設備などに縛られない演出ができる。見る人に楽しんでもらえる文化祭にしたい」と意気込む。


長野県松本市の松本県ケ丘高校は6月、生徒の発案でオンライン文化祭を開いた。体育館での開祭式やバンド演奏をZoomで生中継。生徒は各教室で視聴し、開祭宣言に合わせてクラッカーを鳴らして盛り上げた。美術部や書道部はクラスターのVR空間で作品展を開いたり、画像をインスタグラムに公開したりした。


文化祭を機に部活動を引退する生徒も多く、「最後の発表の舞台をつくってもらえて良かった」との声も。染野雄太郎教諭は「生徒自ら新型コロナに向き合い、オンラインの楽しさを追求できた」と評価する。実行委は来年以降もオンラインの活用を検討している。


神戸市の私立灘中学・高校も7月11日から8月7日まで特設サイトを立ち上げて「オンライン文化祭」を開いた。ユーチューブでダンスや漫才のほか、ブロック玩具「レゴ」で京都・八坂神社の西楼門を作る様子など約50本の動画を公開。撮影や編集は全て生徒が手掛けた。進学希望者や一般の人にも学校の雰囲気を感じてもらおうと校内を紹介する動画も用意した。


文化祭は例年2万人が来場するが、生徒会役員で高校3年の永木孝太さん(18)は「オンラインなら時間や場所にとらわれず視聴できる。これまで以上に多くの人に見てもらえたと思う」と話す。


オンライン文化祭は各地に広がりつつある。東京・多摩地域にある高校の生徒会役員で運営する多摩生徒会協議会が6月、SNSで呼びかけた調査によると、回答した全国62校の生徒会や実行委などのうち約4割がオンライン文化祭の開催を検討しているという。


千葉大の藤川大祐教授(教育方法学)は「オンライン文化祭は画面を通じて、その場にいない人にも伝わるように表現する練習になり、メディア学習の機会に適している」と指摘。動画を校外に公開する場合は肖像権などに注意する必要はあるが「前例がないことに取り組み、試行錯誤することが貴重な経験になる」と話す。


(大城夏希)


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